ダイオードは小さな部品に見えますが、選び方を間違えると不思議なトラブルにつながりやすい部品です。
たとえば:
- 低周波整流で
1N4007を使ったら問題なく動く - 高周波スイッチング電源で普通の整流ダイオードを使うと、効率や発熱が問題になる
- 低電圧大電流の場面でショットキーを考慮しないと、電圧降下で無駄に電力を失う
- インターフェースが静電気やサージでよく壊れるのに、TVS を入れていない
そのためダイオード選定では、「導通できるか」だけを見てはいけません。周波数、電流、電圧、順方向電圧降下、回復速度、保護要件も見る必要があります。
以下では、よく使う 6 種類のダイオードについて、簡単な判断の流れを整理します。
1. 汎用ダイオード
汎用ダイオードは、最も一般的で安価な種類のダイオードです。
向いている場面は次の通りです。
- 周波数が高くない
- 効率要求が高くない
- スイッチング速度要求が高くない
- コストを抑えたい
- 通常の一方向導通または低周波整流だけが必要
代表例は 1N4007 のような普通の整流ダイオードです。
50 Hz の商用周波数整流や、低速・低コストの回路であれば、汎用ダイオードで足りることが多いです。
安価で入手しやすく、仕様の幅も広いのが利点です。一方で速度は遅く、電圧降下や逆回復特性は高周波用途に向きません。
簡単に言えば、低周波、低コスト、とりあえず使えればよい場面では、まず汎用ダイオードを見ます。
2. ファストリカバリダイオード
ファストリカバリダイオードのポイントは「回復速度」です。
普通のダイオードは、順方向導通から逆方向阻止へ切り替わるときに、瞬時に完全オフになるわけではありません。逆回復の過程があります。低周波では目立ちませんが、高周波回路では損失、発熱、波形の問題につながります。
ファストリカバリダイオードは次の場面に向いています。
- スイッチング電源
- モータードライバ
- インバータ
- 高周波整流
- 高周波・高電圧のスイッチング経路
回路周波数が商用周波数より明らかに高い場合、またはダイオードが高速スイッチング経路にある場合は、普通の整流ダイオードで代用しないほうがよいです。
簡単に言えば、高周波、高電圧、高速スイッチングでは、まずファストリカバリダイオードを見ます。
3. ショットキーダイオード
ショットキーダイオードの特徴は、順方向電圧降下が低く、スイッチングが速いことです。
普通のシリコンダイオードの順方向電圧降下は 0.7V 前後がよくありますが、ショットキーダイオードは通常もっと低くなります。低電圧大電流の場面では、この差がそのまま発熱と損失の低減につながります。
ショットキーダイオードは次の場面に向いています。
- 低電圧電源
- 大電流整流
- DC-DC コンバーター出力
- 効率を上げたい回路
- 逆接続保護や OR-ing 回路
ただし欠点にも注意が必要です。逆方向漏れ電流は一般に大きく、耐圧は高耐圧整流ダイオードほど高くないことが多いです。
「電圧降下が低い」だけで無条件に使わず、逆方向耐圧と温度時の漏れ電流も確認します。
簡単に言えば、低電圧、大電流、効率重視なら、まずショットキーダイオードを見ます。
4. ツェナーダイオード
ツェナーダイオードは、通常の一方向導通を主目的にしたものではなく、電圧をある値付近に制限または安定させるために使います。
よく使う場面は次の通りです。
- 簡易基準電圧を作る
- あるノードをクランプ保護する
- 入力電圧範囲を制限する
- 簡単な過電圧保護
- 小電流の電圧安定化
たとえば、ある信号ノードが特定の電圧を超えないようにしたい場合、ツェナーダイオードでクランプできます。
簡単な基準電圧が必要なだけなら、ツェナーダイオードと電流制限抵抗で実現できる場合もあります。
ただしツェナーダイオードは万能なレギュレーターではありません。精度、温度ドリフト、ノイズ、消費電力を考慮する必要があります。電流変動が大きい場合や精度要求が高い場合は、専用のレギュレーターや基準電圧源を検討します。
簡単に言えば、電圧安定、基準電圧、ノードクランプが必要なら、まずツェナーダイオードを見ます。
5. 発光ダイオード
発光ダイオード、つまり LED です。
用途は分かりやすいです。
- 電源状態の表示
- 信号状態の表示
- 簡単な表示
- 照明やバックライト
LED を選ぶときは、色だけを見てはいけません。次の項目も確認します。
- 順方向電圧
- 順方向電流
- 輝度
- パッケージサイズ
- 指向角
- 電流制限抵抗または定電流駆動が必要か
初心者は電流制限を忘れがちです。LED は普通の電球のように電源へ直接つなぐものではありません。通常は直列の電流制限抵抗、または定電流駆動回路が必要です。
簡単に言えば、発光、表示、状態表示が必要なら LED を使います。ただし電流制限は必ず計算します。
6. TVS ダイオード
TVS ダイオードは、瞬間的な高電圧に対する「ガード」と考えると分かりやすいです。
主に次の問題に対応します。
- 静電気
- サージ
- 雷サージ誘導
- 挿抜時のスパイク
- 外部インターフェースからの異常高電圧
配置に向いている場所は次の通りです。
- 通信ポート
- センサーインターフェース
- 電源入力
- ボタンや外部配線インターフェース
- 人体静電気が触れやすい場所
TVS の役割は長期的な電圧安定ではありません。瞬間的な過電圧が出たときに素早く導通し、電圧をクランプして後段回路を守ります。
TVS を選ぶときは次を確認します。
- 動作電圧
- ブレークダウン電圧
- クランプ電圧
- ピークパルス電力
- 静電容量
- 単方向か双方向か
高速信号線では TVS の接合容量に特に注意が必要です。容量が大きすぎると、信号品質に影響します。
簡単に言えば、インターフェースを静電気、サージ、外部高電圧スパイクから守りたいなら、まず TVS ダイオードを見ます。
すばやい選定ルール
まずは次の考え方で大まかに選べます。
- 低周波整流、安くて丈夫:汎用ダイオード
- 高周波高電圧スイッチング:ファストリカバリダイオード
- 低電圧大電流、効率重視:ショットキーダイオード
- 電圧安定、基準電圧、ノードクランプ:ツェナーダイオード
- 発光、表示、状態表示:LED
- 静電気、サージ、突発高電圧の保護:TVS ダイオード
このルールはデータシートの代わりにはなりませんが、最初の方向を決める助けになります。
実際の型番を選ぶときは、さらに次を確認します。
- 最大逆電圧
- 平均整流電流
- ピークサージ電流
- 順方向電圧降下
- 逆回復時間
- 逆方向漏れ電流
- パッケージと放熱能力
最後に
ダイオード選定の第一歩は、型番を暗記することではなく、そのダイオードが回路内で何を担当するのかを判断することです。
低周波導通だけなら普通のダイオードで足りることがあります。高周波スイッチングならファストリカバリ、低電圧高効率ならショットキー、電圧クランプならツェナー、光らせるなら LED、インターフェース保護なら TVS を見ます。
まず用途で分類し、その後データシートのパラメーターを見ると、選定がかなり分かりやすくなります。